「親の介護」と聞くと、多くの人がまだ先のことだと感じるかもしれません。でも、その準備は「介護が始まってから」では遅いことがあります。ツギノテ塾の第4回では、株式会社ぎんのコンシェルジュ代表の中川さんをゲストに迎え、7月5日を「75の日」とする新しい啓発プロジェクトについて語っていただきました。
なぜ「75歳」が節目なのか
健康寿命——治療が必要な病気になったり、支援が必要になったりせず元気に暮らせる期間——は、平均すると男性で72歳前後、女性で74歳前後で尽きると言われています。75歳という数字は、多くの人にとって「体が思うように動かなくなる」「支援が必要になる」可能性がぐっと高まる、ひとつの目安なのです。だからこそ中川さんは、この年齢を意識して家族で話す機会をつくることを提案しています。
敬老の日とは何が違うのか
「お年寄りを敬う」という漠然とした趣旨の敬老の日に対し、75の日が目指すのは、もっと具体的な対話です。体のこと、これからどう生きていきたいか、延命措置についての意思、資産や証券口座の情報——。元気なうちにしか話せないことは、想像以上に多くあります。認知症が進んでからでは、本人の意思を確認することすら難しくなってしまいます。
本当のターゲットは、75歳の親ではなく50代の子世代
75の日が啓発しているのは、実は75歳の本人だけではありません。最も大きなターゲットは、75歳前後の親を持つ50代の人々です。会社では役職を任され、子どもは高校生や大学生、共働きで時間にも余裕がない——そんな世代が、ある日突然親の介護に直面し、介護離職に追い込まれる。日本では毎年10万人以上がこの問題に直面していると言われています。情報収集をしようにも、何が正しい情報か分からず、結局先延ばしにしてしまう。だからこそ、75の日という「きっかけ」が必要なのです。
写真館、旅行、家事代行——企業と広げる、感謝のかたち
75の日プロジェクトでは、地域の企業との連携も模索されています。たとえば写真館で家族写真を撮る、旅行先で非日常の時間とともに話をする、お掃除サービスをプレゼントする——。クリスマスやバレンタインのように、経済が動くきっかけにもなり得ると中川さんは語ります。ただ「親孝行をしよう」と呼びかけるだけでなく、具体的な行動の選択肢を社会全体で用意していくことが大切なのだと感じさせられます。
3代、4代へとつながっていく文化
中川さんが最後に語ったのは、この活動が一世代だけのものではないということでした。親を大切にする姿は、子どもや孫の世代にも自然と伝わっていきます。「お年寄りが大切にされる社会」は、同時に「自分が歳をとっても大切にされる社会」でもあるのです。
「歳をとっても楽しむ権利がある——それを、奈良から全国に広げていきたい」——中川さんのこの言葉が、第4回全体を貫くメッセージでした。

